・1.活動内容
・2.活動を始めたきっかけ
・3.今後の計画
・4.今、困っていること
・5.どんな協力があると嬉しいか
・末筆・編集後記
・連絡先
「桐生(きりゅう)は日本の機(はた)どころ」。
桐生は機織り(はたおり)で有名な町ですが、機織りといえば「糸」。
蚕(かいこ)の繭(まゆ)から「生糸(きいと)」を作っていた「富岡製糸場」が有名です。
富岡製糸場といえば「渋沢栄一」さん。
2024年7月3日から、一万円札としてデビューします。
大河ドラマ「青天を衝け」でも取り上げられ、話題となりました。
当取材では、1300年以上の歴史がある伝統工芸品「桐生織(きりゅうおり)」の機屋(はたや)。
「龍匠錦(りゅうしょうにしき)」の小林靖子(やすこ)さんにお話を伺いました。
ですが、まずは予習を。
「縦の糸はあなた。横の糸は私」という中島みゆきさんの歌詞があるように、織物は縦と横の糸が重なりあっています。
格子状に連なる糸を意識すると、多少はイメージをしやすそうです。
それでは、以下のインタビューをお楽しみください。
●1.活動内容
ーーー活動内容について、お聞かせください。
私の職業は、機織り(はたおり)です。
機械(=はた)を使って、布を織る(=おる)ことが仕事です。
主に製織(せいしょく)しているものは、桐生織の技法による着物の帯になります。
他にも財布や名刺入れ、コースターなどの小物を作り、イベント出店などもしています。
龍匠錦の製品には
・桐生織による伝統工芸品
・群馬県産の絹糸「ぐんま200(にひゃく)」を100%使用
・龍村晋(たつむらしん)謹製の帯や名物裂(めいぶつぎれ)を製織。
といった特徴があります。
ーーー仕事の内容について、詳しくお聞かせください。
そもそも桐生織というのは、織り方に関して7つの技法が存在します。
そのいずれかの技法に則って織った生地が、桐生織と呼ばれるものです。
そして桐生織の製造工程は、おおまかに15の工程を通して、納品に至ります(細かくいうと、もう少しあります)。
桐生市内に、各工程毎の専門家や職人さんがそれぞれ集まっていて、次の方へとバトンタッチします。
また小規模の事業者ですと、ひとつのチームとしてまとまっていることが多いです。
私の場合は、15の工程のうち「糸繰り(いとくり)」「管捲き(くだまき)」「機織(はたおり)」という工程に携わっています。
まずは各工程を順序立てて、説明します。
まず繭から製糸した糸を「生糸」と呼びます。
「撚糸(ねんし=糸を撚(よ)ること=ねじること)」「精練(せいれん)=着色のためにタンパク質を落とす作業」「染色」のあと、糸を管に巻く作業が「糸繰り」です。
木管や、ボビンに巻いていきます。
そのあと、たて糸の本数と幅を決め、長さを揃える工程を踏み、次によこ糸を木管に巻きます。
たて糸の工程は「整経(せいけい)」と呼び、他の職人さんが担当しています。
よこ糸の準備工程が「管捲き」です。
次に「図案・意匠」の工程。意匠紙(いしょうし)という方眼紙に図案をおこします。
「デザイン・編集」でデータ化し「紋紙(もんがみ)」と呼ばれる紙を作ります。
紋紙は織機を動かすための指示書です。
いくつも穴が空いていて、その位置によって織機がよこ糸を通す位置を決めています(龍匠錦の織機ではフロッピーディスクのデータを読み取り、よこ糸を通す位置が決まります)。
そうして何度もよこ糸を通して「生機(きばた=布生地の状態)」を仕上げる工程が「機織」の工程です。
以降は「整理」と呼ばれる工程。
「湯のし(反物に蒸気を当てて風合いを良くする)」「湯通し(糊取り・軟化・収縮防止)」をします。
最後に「仕上げ(検品・補修)」を終えて、ようやく「製品・出荷」となります。
●2.活動を始めたきっかけ
ーーーいろんな方が携わるお仕事なのですね。では、お仕事を始めたきっかけは何だったのでしょうか?
母が機屋の工場で経理の仕事をしていまして。
母から正社員で入社できると言われて、業界に入ったのがきっかけでした。
●3.今後の計画
ーーーご家族から誘われて始めたのですね。では、今後の計画などはどのようにお考えですか?
先ほど、15の工程の話をしました。
寂しいことですが、一部の工程ではすでに廃業していて技術が失われつつあります。
ですので、今抱えている在庫を使って帯や小物を作っていく予定です。
とはいえ、和装でもポリエステル製品が多い中、弊社では群馬県産絹糸を使っており、自信を持って製品を提供できます。
ちなみに今はレディースの靴下を作るという案が出ており、試作品を編んでいる最中です。
冬はインナーとしてシルクの靴下を重ね履きすると、冷えが取れるそうです。
夏はベタつきがなく、履き心地がよいです。
●4-5.困りごとと希望すること
ーーーシルクの靴下、機能的ですね!最後に困りごとと、希望していることをお伝えください。
15の工程の話ですが、専門外の事は分かっていません。
既に無くなってしまった技術もあり、困っています。
そのため、今のうちにできるだけ多くの技術を残していきたいと考えています。
技術を受け継ぐ組織や機関を作っていただけると嬉しいです。
たとえば、行政の方に技術を引き取ってもらい、そこから学生などに教えるような形で残していくといった方法が考えられます。
すでに一部の技術が途絶えてしまった事実を真剣に受け止め、危機感を持ち、急ピッチで動かなければなりません。
50〜100年後の未来で子ども達が自分たちの町を誇れるように、歴史と伝統が途絶えないように、ご助力いただけますと幸いです。
ーーーありがとうございました。着物の帯では、背中の特定の位置に絵柄がピタっと収まるように織るのは、相当な職人技のようです。
また15の工程を紹介しましたが、他にも織機を調整する人、織機のモーターを確認する人、部品を販売する機料(きりょう)屋さんなど、様々な専門職の方が携わっているようです。
お話を聞くと、まさしく伝統工芸品。そんな桐生織で作った贅沢な一品、私も愛用しています。とても素敵なので、読者の皆様もぜひお手に取ってみてください!
また桐生織に興味を持たれた方、継承サポート・資金提供などにご協力いただける方は、以下の龍匠錦様の連絡先までお問い合わせください。
====================
◆取材先・原稿監修
龍匠錦(りゅうしょうにしき)
小林 靖子(やすこ)さん
・電話番号
090-7272-8995
・メールアドレス
yyaassuukkoo@icloud.com
・公益財団法人 桐生地域地場産業振興センター(オンラインショップ)
・「龍匠錦」紹介ページ
・龍匠錦HP
====================
◆インタビュアー・撮影・ライティング
Rin5Graphic(リンゴグラフィック)
小林 実
東京から群馬に移住したフリーランスライター。